いがぐり史料館

大きな声にかき消されてしまった本当の歴史、真実への探究にご利用ください。主に幕末史に関する史料を掲載していきたいとおもってます。

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長命寺の戦

長命寺の戦

 八月二十五日総督佐川官兵衛はこの日未明に進軍の手筈なりしが、時機を失し、ようやく卯の下刻頃に至り諸隊を黒金門に整い、軍を発するに当り、我が公これを大鼓門に送る、衆辞して行く、歩兵隊、正奇隊、朱雀三番士中隊先鋒たり、雷字の評旗前にあり、朱雀二番足軽隊、進撃隊、砲兵隊これに次ぎ、総督官兵衛は後陣に在り威風凛然たり、城の西門(追手門)を出で米代一ノ丁を経て融通寺町門に至り全軍吶喊して一気に西兵(備前兵)を撃退す、歩兵隊先鋒たり、砲兵隊一番分隊水野萬吾、一瀬一郎、大束救馬、角小眞喜、守屋岡太郎等諏訪社を守り、三番分隊は桂林寺町の西兵を横撃す、正奇、朱雀一番士中、会義の三隊は西名子屋町より手明の背後に廻り、寶泉寺の墓間によって暫く長命寺の西兵(大垣兵)と戦い、三隊を転じて湯川の溝渠に沿うて下り穢多町の西に向かう、朱雀一番士中隊先鋒たり、歩兵隊は南よりし、朱雀二番士中隊は長元寺の背後に至り、兵を二分して長命寺と穢多町との敵壘に迫る、別選組隊、朱雀二番足軽隊は西名子屋町に進み、別選組、進撃の分隊は長命寺の西兵を猛撃したれば西兵驚き走る、すなわち壘壁を奪い敵将を斃し、その軍旗を奪う、我が兵処々に撒兵して乱射す、長州、大垣、備前の兵力戦し弾丸雨注す、我が兵死傷を顧みず縦横馳突す、田中隊は奮戦して穢多町の敵壘を奪いたるが西兵(長州、大垣、備前)砲銃を猛射して反り戦う、我が兵衆寡敵せずして退き、正奇、朱雀一番士中、会義の三隊と共に穢多町の西に向かう、西兵一里塚に壘壁を築きてこれに據る、我が兵進んでこれを奪わんとし相距ること、わずかに十数間、朱雀二番士中、正奇の隊兵は躍って溝渠を出で槍を揮って突撃し飛弾雨の如し、我が兵皆殊死して戦う、会義隊頭助勤内藤勇五郎(年二十四)、同小隊頭内藤隣之助(勇五郎弟、年二十二)、同右翼取締森川金次郎(年二十七)は皆勇猛の士にしてしばしば戦功を立てたるが、この日皆戦死す、敵逡巡して砲を発すること能はず、会々その援軍加わり射撃すこぶる烈しく我が兵砲を装填するに暇あらず、朱雀三番士中隊小隊頭庄田又助声を励ましていわく、一斉に刀を抜いて斬り入れよと、その声未だ終わらざるに又助弾丸に当って斃れ、部下の士横山次郎その首級と双刀とを収めこれを同隊遠山清蔵に授けて戦いたるが清蔵もまた斃る、次郎すなわち清蔵の佩刀を以て介錯し、これを同隊名越治左衛門に授けて又進んで戦う、海野小太郎は永岡彦彌、横山次郎等に言っていわく、我が軍多く死傷す、一旦退いて再挙を図るの外なしと、彦彌いわく、我が隊士皆斃れ存する者如何ともなしと語未だ終わらざるに中野忠之助(朱雀三番士中隊士、年十九)、南辰三郎(同上、年十九)、弾丸に当って斃る、永岡は二人を馘りこれを泥中に埋めてまた戦う、敵ますます来り迫る、海野、横山、永岡等隊軍の途、川島勝三郎負傷す、永岡すなわち川島の銃を負い後より呼んでいわく、我今君の銃を負いたれば心を安んぜよと、且つ戦い、且つ退き柳原に至る、横山は永岡に言っていわく、生きて還らざることを期して城を出てたるに今何の面目あって城に帰らんや、敵に赴いて死するにしかずと、永岡いわく、数人にして反り戦うも何の効かある、再戦の機を待ちて共に死せんと、退いて本隊に合す〔若松記〕。

 歩兵隊は南方より穢多町に向かいたるが進むこと能はず、長命寺に退いて戦う、朱雀二番士中隊中隊頭田中蔵人、正奇隊頭杉浦丈右衛門戦死し、諸隊死傷半に過ぐ、残兵は川又は溝渠に沿うて戦う、西兵は北小路町老町の巷口に発砲し、朱雀二番足軽隊、別選組隊の分隊は西名子屋町の焼け跡に止りて応戦す、西兵には薩土の兵来り援け彼らの砲声天に震い、我が軍苦戦時を移す、別選組隊頭春日佐久良戦死し、組頭黒河内左力、同古田虎之丞、同樋口萬伍等傷き、朱雀二番足軽隊中隊頭間瀬岩五郎もまた戦死し、隊兵渡部栄吾これを介錯して退く〔林繁書出〕、時に幌役菊池順蔵、門奈治部戦況を視察し、諸隊苦戦の状を報じ援を請う、すなわち朱雀三番寄合組隊中隊頭鈴木一郎右衛門、青龍二番士中隊中隊頭有泉壽彦をして兵を率いてこれを援けしむ、巳の刻頃、朱雀三番寄合組隊一番小隊は融通寺町城安寺に撒布し、二番小隊は同寺の前方に進んで銃撃し、有泉隊は同寺の西方より射撃してこれを援く、西軍更に大兵を加えて猛撃し我が兵利あらず、官兵衛鉦を連打せしめて兵を収む、歩兵隊、進撃隊は長命寺を放棄し城安寺に至りて戦う、諸隊ようやく長命寺を退く、別選組分隊もまた同寺を距る半町許にして止まり戦いしが、転じて西名子屋町に進み分隊三番と合して殿戦す、官兵衛奮激衆を督して戦うといえども、西兵の進撃甚だ鋭く、進撃隊頭小室金吾左衛門、小隊頭助勤礒上内蔵之丞等斃るゝ者多し、砲兵隊頭田中左内兵を率いて城安寺に至りこれを援く、この時左内は大声に進軍を号令す、その声未だ終わらざるに福田八十八、猪狩恒五郎、佐藤猪三郎、鋤柄主殿、原三六、小林又太郎、板橋八彌、高山勇彌、渡部次郎等猛進奮闘すといえども先鋒諸隊敗れて支持すること能はず、ついに退く、西兵勢いに乗じてますます迫り桂林寺町、赤井町を廻りて我が軍後を衝かんとす、諏訪社を守れる砲兵三番分隊は同社の土壘に伏して西兵の来るを望み、距離を測り銃を連ねて狙撃したるに、ほとんど虚発なく西兵の死傷すこぶる多く残兵狼狽して走る〔若松記、七年史〕。

 午の刻頃、我が公は、我が軍利あらず、佐川総督の身もまた危うしと聞き、平尾豊之助を召し特に命じていわく、聞く我が軍利あらずと恐らくは官兵衛死せん、汝疾く行きてこれを止めよと、豊之助命を奉じて馳せて融通寺門町に至れば我が軍すでに退いてここに在り、すなわち使命を官兵衛に伝う〔若松記、七年史、自警篇〕、朱雀三番寄合組隊(正奇隊の残兵これに属す)、朱雀二番士中隊、別選組隊、朱雀三番士中隊は融通寺町門より川原町門に至るまで土壘の上に胸壁を築いてこれを守る、青龍二番士中隊(朱雀二番足軽隊の残兵十二人これに属す)は桂林寺町門を守り、進撃隊は横丁に在り、歩兵隊は陣営傍近の市街を警備し、会義隊、秋月新九郎隊は大町通を守る〔若松記〕。

 青龍三番足軽隊中隊頭日向彌志摩は飯寺村に在りたるが、穢多町の砲声を聞き、兵を率いて御旗町の背後より黒川の堤上に至りて戦うといえども衆寡敵せず兵を飯寺村に収む〔若松記、七年史〕。

 この日我が軍の進撃するや将士皆決死して、必ず仇敵の掃滅を期し誓って生還を思はず、只銃乏しき為、多くは槍を執って敵中を馳突し飛丸の為に斃るゝ者累々たり、死者実に百七十名におよび傷者またこれに準ず、戦終わるの後、敵軍我が屍体を検せしに皆法号および「慶応四辰年八月二十九日戦死」と記したる紙片を所持せりと云う、この事徃々西軍諸戦記の記する所なり、以てその決死奮闘の状を想うべし、左に大垣史談会の奥羽征討史資料下卷より一節を摘録してその一斑を示す。

{此日賊は最後と極めしや会城へ攻め入りし以来、今日ほど多勢にて手強く打って掛りし日はなく、何れも必死にて生還を期せざる覚悟と見へ、賊の死屍およそ百二三十其の懐中に各自法号と慶応四辰年八月二十九日戦死と認めたる紙片を所持せりその最後の決心と見へ、今日ほど骨の折たること前後になかりし}

 この日、我が精鋭の将長(士卒はこれを除く)死傷左のごとし。

朱雀二番士中隊
 死
中隊頭 田中蔵人
小隊頭 赤羽宇兵衛
半隊頭 海野小兵衛
付属貫義隊司官 海野順平 野田錯之進
 傷
半隊頭 土子兵右衛門


別選組隊
 死
隊頭 春日佐久良
 傷
組頭 吉田虎之丞(後死) 樋口萬吾 服部栄(後死)


朱雀三番士中隊
 死
小隊頭 庄田又助
 傷
中隊頭 原田主馬
小隊頭 長坂長九郎(後死)


正奇隊
 死
隊頭 杉浦丈右衛門
小隊頭 菊池勝之丞
半隊頭 伊藤彌一郎


進撃隊
 死
隊頭 小室金吾左衛門
組頭 礒上内蔵之丞
小隊頭 杉本彌次郎 武井清兵衛
幌役 安藤監治 梶原悌蔵


歩兵隊
 傷
歩兵指図役 小櫃彌市


朱雀二番足軽隊
 死
中隊頭 間瀬岩五郎
 傷
小隊頭 安藤彦五郎


会義隊
 死
隊頭助勤 内藤勇五郎 
右翼取締役 森山金次郎
 傷
半隊頭 兼子喜一


砲兵隊
 死
組頭 福田八十八
 傷
幌役 池上沖三郎



 死
順風隊指図役 舟橋捨蔵
○ 佐川幸右衛門
軍監 鈴木丹下 有賀勝助


 この日、武井柯亭進撃隊頭と為り〔小室後任〕、三坂数之助別選組隊頭と為る〔春日後任、若松記〕。

 狙撃隊は竹村幸之進これを率い守城中本丸に在り、終始総督山川大蔵に専属し城兵の中堅たり、兵数は僅かに半小隊に過ぎざれども角田秀松、下平英治、柳田留六、河田圭介等のごとき壮年有為の諸士を選抜して組織したるものにして、その精鋭なること諸隊その右に出づるものなし、隊士は皆能く幸之進に心服し、能く防戦し、またしばしば城外に出て激戦して功績あり、この日の進撃に加わらざりしは、すなわち本丸の中堅たりしが故なり〔会津会々報第十号〕。






卷八 会津城下の戦 其二 自八月二十五日 至八月二十九日

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