いがぐり史料館

大きな声にかき消されてしまった本当の歴史、真実への探究にご利用ください。主に幕末史に関する史料を掲載していきたいとおもってます。

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二十一  わが公から老中へ送った書面     『京都守護職始末1』

 家老を東下さす     はじめ、わが公が登京されるにあたって、幕府から委任された条件があった。この条件に関して論議せねばならないことがあったのであるが、将軍家の上洛も近かったし、将軍家が永く滞京して禁闕を守護されている以上は、別に論ずるに及ばずと思っておられた。
 将軍家が急遽東下された今となっては、黙止してもすまされないので、この月(六月)二十二日、特に家老田中玄清を東下させ、左の書を老中の人々あてに送った。

この後の勤め向の儀について、嘆願の個条を家臣に持たせ、さし下げ候。なにぶんにも右の個条通り御許容下されたく、ひとえに伏して願い奉り候。さも御座なく候では、この後の勤め向なんともおぼつかなく、自然に御免を相願い候段にもよんどころなく相至るべしと、ふかく心配仕り候。よろしく御汲みとり下され候よう希い奉り候。もっとも右家臣へこの表の事情など委細申しふくめおき候間、なにとぞ御聞き取り下され候よう希い奉り候。

 別紙
一 尾州前の大納言様を将軍の御目代として、またまた京地へ差しおかれくだされたき事。

一 大小御目付、御勘定奉行、奥御右筆の類をも差しおかれくだされたき事。

一 御所より仰せ聞かされ候筋は、御入費相掛けり候とも、大概の儀は相伺わずに手切れの取計らい致したき事。

一 関東へ相伺い候儀は、遅滞なく御答えくだされたき事。

一 梱外(こんがい)の全権は御任せられくだされ、以来、所司代はじめ地役人とも選挙、賞罰はもちろん、黜陟(ちゅっちょく)なども御委任くだされ、其の余、非常の節には京地の御固め、近国の諸侯方、大阪、奈良、伏見の奉行をはじめ、役々にも、守護職の指図をえて相勤め候よう御沙汰くだされたき事。

一 同付属の与力、同心差しおかれ下されたき事。


 



 心なき諸有司     玄清はその旨をふくんで江戸にゆき、老中の人々に謁して京師の事情をこまごまと開陳したが、諸有司の多くは京師の情勢にくらく、なかでも、朝廷の事で費用が多くかかっても守護職に一任せよとの項では、特に反対者が多く、財政に関することだからと言ってゆるさない。また、尾張慶勝卿の件では、命をくだしても卿が御受けすまいというので、これまた裁可されない。その他のことは、たいてい請うがままに裁可された。
 高家、目付、奥右筆などを守護職に付属させることは、無用なことのようであるが、当時、幕府の諸有司はおおむね京師の事を知らないで、往々にわが公のことをひたすら朝議にばかり阿(おもね)って、幕府の立場を毫も考えないなどと言うものがあるので、いま、これらの役々を付属させ、守護職の内外の辛苦の実情を知らせ、彼らの口から諸有司の猜疑を釈然とさせることが、そのねらいであった。
 まもなく守護職附属の目付戸川鉡三郎、奥右筆小野田吉次郎、斎藤錠三郎、徒目付水本竜太郎、山本喜六、岩田三蔵その他小人目付六人が京師に着いた。

 



 失当の一例     当時、縉紳家の人々が国事に容啄(ようかい)して、幕府を掣肘しにかかるが、国家の実務にはまったく無経験なので、その処置が事件の大小、軽重、暖急について当を失うことが、すこぶる多かった。
 一例を示せば、元来、兵庫は畿内の重要な港で、幕府では始め長州藩にその守衛を命じ、後に久留米、高松、岡などの諸藩に代らせようと、すでにその決議があったとき、急に朝廷から脇阪【注一】、永井【注二】の二侯に命令して代らせてしまった。そこでわが公は、議をたてまつり、脇阪、永井のような小藩では、わずかに自分の封境を守るにすぎない。兵庫のような至要の地を守らせても、その任に堪えられようはずがない。もっと有力な藩に命ぜられてしかるべきだと説いたが、すでに朝命が出てしまったあとで、どうすることもできなかった。
 すでに万機を旧のとおり幕府に委任されたのに、なお政令が二途に出ること、このとおりであるから、間に立ったわが公の苦心経営もその功がなく、ただただ、時と事との非であるのを概嘆するのみであった。

        



 【注】

【一 脇阪】 播磨竜野藩(五万一千石)主、脇阪安斐。

【二 永井】 大和新庄藩(一万石)主、永井直幹。

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  1. 2012/11/03(土) 11:19:21|
  2. 京都守護職始末1
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